ベクレルとは
食品の安全性についての政府の基準値は諸外国と異なっており、その名の通り暫定的に決めた暫定基準値なのです。そのために食品の安全性の不安が払しょくできず、生産者も消費者もみんな困っています。
政府の暫定基準値は放射性セシウムでは500ベクレル/kgですが、これは1kgにつき500ベクレルという意味です。放射性ヨウ素は2000ベクレル/kgです。でも一般には1kgもの肉や野菜は食べないので、何グラム食べるかによって少しだけ計算します。例えば500ベクレル/kgの肉を100g食べる場合、分量は1kgの1割なので50ベクレルとなります。
ベクレルの数値は1秒に飛び出すタマ(放射線)の個数を示しています。体内から当たるタマの総数は放射性物質の半減期と体外に排出されるまでの期間によります。1時間なら3600秒なので3600倍、1年間ならさらに1万倍のタマ(放射線)を体内から撃たれます。毎日の食事から取り込んだ放射性物質は体内に蓄積して排出までの間にさまざまな体内の場所を攻撃します。しかしこれもあまりに少なければ、自然界の放射性物質と同程度で心配はありません。
暗算でベクレルからミリシーベルトに
食品が安全かどうかはベクレルをミリシーベルトにして判断します。ベクレルとミリシーベルトは暗算で簡単に相互に概算できます。ヨウ素なら一食のベクレルを50で割り、セシウムの場合はセシウム134とセシウム137の比率次第で50もしくは100で割れば年間のミリシーベルトです。安全サイドでは50を使います。
この計算は本来は一食のベクレルからマイクロシーベルトを出す方法ですが、同じ食事を1年続けた場合の被曝量の方が食生活を判断できます。3食×365日が約千倍なので結果的にマイクロがミリになります。
例えば500ベクレル/kgのセシウム入り牛肉200gを食べると、1kgの2割なので一食100ベクレルです。100を50で割ると2なので、この食生活は年間2ミリシーベルト相当の食事と概算されます。この場合、内部被曝だけで年2ミリは大きいと分かります。次章『放射線の安全基準値』で詳しく説明しますが、自然界以外の被曝で一般国民の基準値は法律で内部被曝と外部被曝の合計で年間1ミリシーベルトです。
暗算でミリシーベルトからベクレルに
逆に、食品摂取の許容被曝量のミリシーベルトからベクレルを出すには年間のミリシーベルトをヨウ素なら50倍、セシウムは慎重に考えて50倍するとベクレルが出ます。どちらも50と覚えておくと便利です。
例えば食べ物での原発由来の内部被曝を年2ミリシーベルトに抑えるためには50倍して一食セシウム100ベクレル以下だと分かります。もし0.5ミリシーベルトにするなら50倍して一食当たり25ベクレルです。
食べ物の安全性は自分たちで判断
各食品のベクレルとミリシーベルトが暗算できれば、次章の安全基準値を使って自分で判断ができます。
ヨウ素131、セシウム134、セシウム137の中で、半減期8日のヨウ素131の影響は少なくなりますが、セシウムに関しては半減期30年のセシウム137だけでなくて、半減期2年のセシウム134も心配されています。半減期が短いのでセシウム134は5年~6年後には無くなりますが、それまでは注意が必要です。
これからは自分たちの食べ物の安全性は自分たちで判断するしかないのです。なお内部被曝の健康被害はまだ不明なことも多いですし大気や地面からの外部被曝や、吸い込んだ粉塵による内部被曝もあります。なお内部被曝のことになると自然界の放射性カリウムを持ち出してセシウムは安心だという学者がいますが、ごまかしです。このことについて関心のある方には、『原発と放射線 第3版』Appendixの『C.カリウムの嘘』が役立ちます。
参考資料
以下に暗算方法の理由ついて説明します。気になる方以外は読み飛ばしてください。
セシウム137は100で割ると1年間のミリシーベルトになりますが、セシウム134は50で割ると1年間のミリになります。一般にセシウム134とセシウム137の合計で数値が示されることが多く、各々の比率も明確でありません。5~6年後にセシウム134はなくなるはずですが、それまでは、慎重に考えて概算値は50がいいです。
正確にはヨウ素は概算値の1.2倍、セシウム137は1.4倍です。セシウム134は概算値が正確です。例えば100ベクレルのヨウ素は50で割ると2ミリですが正確には2.4ミリです。100ベクレルのセシウム137は100で割ると1ミリですが正確には1.4ミリです。 (根拠 ヨウ素:2.2μSv、セシウム137:1.3μSv、セシウム134:1.9μSv、それぞれに×3食×365)
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この記事は『原発と放射線 第3版』に掲載しました。ぜひ電子書籍もお読みください。無料です。
http://www.nakayama-lab.com/essay/atm.html
2011年10月05日
暗算でベクレルと被曝量の換算
posted by 中山幹夫
| 食品の放射能汚染