『原発と放射線』が新入生への配布冊子『本はおもしろい』で学生に読んでほしい本の一つとして紹介されることになりました。若い力に期待を込めて書いた冊子掲載の紹介文です。
中山幹夫著 ウック(電子書籍) 2011年 無料
『原発と放射線』 第3版
−真実を知り、自分の身は自分で守るしかない−
子供たちの未来のために
「過去に目を閉ざす者は未来に対してもやはり盲目となる」第六代ドイツ連邦大統領ヴァイツゼッカーの言葉である。東日本大震災により空前の規模の原発事故が起きたが、政府関係者は現実に目を閉ざし、情報公開を遅らせて事故の深刻さを矮小化した。今では原発事故の報道も減り、事故は終ったかのようだ。私たちは過去に目を閉ざすどころか今起きている現実にさえ目を閉ざすのだろうか。
本書では「日本で起きていることは情報戦争」だと述べている。過去にも肝炎被害、水俣病、薬害エイズなど、どれも当初から危険性が指摘されていながら、正しい報道がされたのは被害が大きく広がった後である。副題「真実を知り、自分の身は自分で守るしかない」は、自分と家族そして子供たちを守るためには、テレビや新聞の情報を鵜呑みにするのではなく、自ら情報を収集して判断することが重要であることを示している。そのためには私たち自身が放射線の知識を身に付け、政府や自治体の現状を知らなければならない。日本が世界からどう見られているかという広い視野も必要だ。
『原発と放射線』は四月にホームページで公開され各界から多くの反響があり、その後、電子書籍化され、六月に第二版、十月に第三版を発行して無料公開を続けている。少ない読者数ではメディアとしての影響力はないので五月から一カ月間Google AdWords広告に集中掲載。さらにツイッターを活用して議員やジャーナリストなど五千人近いフォロワー数を抱え、十月までの半年間で本書は通算十四万アクセスを突破した。「原発と放射線 中山」と検索しても膨大なリンクがある。著者はブログも活用して情報発信し、九月の記事は二日間で十三万ものアクセスがあった。本書をネットで知った環境省の地球環境戦略研究機関からの依頼で十一月に著者は「東日本大震災からの農業および食品部門の復興」の専門家会議で「放射線情報と市民」の発表をした。本書は、子供たちを守るためにネットを駆使して被曝防護と被災者支援、政府と行政への働きかけを進める著者の実践そのものである。
この電子書籍はネットを最大限活用してホームページ、ブログ、ツイッターと密接に連携する生きた書籍と言える。出版社のサイトには読者から「福島市に住んでいます。日本中から見放されたと思っていました。この本を読んで、味方になってくださる方がいるんだと知りました」とのコメントも寄せられている。まさにネットメディアがマスメディアを凌ぐ時代の到来を感じさせる書籍である。
『原発と放射線 第3版』
http://www.nakayama-lab.com/essay/atm.html
2012年02月11日
新入生へのおすすめ本『原発と放射線』
posted by 中山幹夫
| 脱原発