私が強く主張した点に理解を示し、補足説明に「重視しなければならないのは、震災直後から多くの人が高い恐怖・不安得点を付けており、さらに6月調査時点にかけてすべての属性で恐怖心や不安が増している」 が明記された。
補足説明(オリジナル:全文)
http://www.gcoe-econbus.keio.ac.jp/doc/PressRerease0222rr.pdf
補足説明(キャッシュ:解釈・含意の該当部分にアンダーライン付加)

補足説明には統計的な有意性についての記述があるが、その信憑性には疑問が残る。しかも、指摘した数多くの内容について補足説明では一切触れられていない。特に次の3点である。(詳細は該当ブログ参照)
(1)文系と理系の比較に関して【文系も理系も高いのに、わずかな差をことさら大きく捉えて「文系ほど不安・恐怖が拡大」とし、その理由を「科学的知識が少ない文系」だからとするのは偏見と先入観により誇張され歪曲された分析である】と指摘した件。
(2)所得層別の調査に関して【対策を考える人は所得に関係なく『原発事故と放射能汚染の不安』が高い。高所得層は対策を取りやすいので『当面の不安』が減る。『当面の不安』が反映されるこの調査は『原発事故と放射能汚染への不安』の調査としては信憑性がない】との指摘。
(3)所得層別の分析に関して【上記に関連して高所得層の『原発事故と放射能汚染への不安』は調査データよりも高いと期待できるため、この調査で高所得層の方が不安を感じる人が若干少なくても『原発事故と放射能汚染への不安』が低所得層ほど高いとは言えない】との指摘。
しかしながら、慶應の対応は迅速かつ真摯な対応であり、さらに慎重に検討していくとのことなので今後の精査された調査分析を期待したい。
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・「東日本大震災に関する特別調査」
(2012/02/22追記 プレスリリース中のトピック2に対する補足説明を掲載)
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2011/kr7a430000094z75.html
関連ブログ
・慶應大学に訂正を求める『東日本大震災に関する特別調査』
・慶大へのメール
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公開の場での議論であることを慶大に明示しているので、返信についても下記に慶大からのメール全文を掲載して公開する。
Subject: 『東日本大震災に関する特別調査』に関するプレスリリースについて
From: パネル調査共同研究拠点
CC: pd-info@adst.keio.ac.jp
Date: Wed, 22 Feb 2012 17:52:46
神田外語大学
中山幹夫先生
このたびは『東日本大震災に関する特別調査』に関するプレスリリースについて、パネルデータ設計・解析センターへご連絡いただき、ありがとうございました。
本調査は、東日本大震災後の国民の福祉向上のために、社会科学に携わる研究者として、今やらなければならない責務は、大震災で人々の心理や価値観、行動がどう変わったかを明らかにし、それに応じて国民の不安や生活上の不利益を和らげるための施策をいかにして構築していくかを検討することにあると考え、実施したものです。こうした問題意識を持ちながら、現在、本調査を用いた研究を私ども研究者が大学の垣根を越え、被災地の先生方の協力も得て、共同して多角的に進めているところです。一方で、震災から1年が経とうとしている状況に鑑み、調査結果の概要と研究の途中結果のエッセンスをできるだけ早期に公表することも必要であると判断し、プレスリリースの形で調査結果の概要を中心に公表させていただいた次第です。
しかしながら、プレスリリースの内容が、私どもの意図する方向とは別の形で影響を及ぼしてしまう可能性、あるいは、統計的有意性など、調査結果への解説が十分でないために、結果の信憑性に疑問がもたれてしまう危険性もあるという、先生のご指摘を私どもは重く受け止めております。
こうしたことから、本日、プレスリリース資料トピック2に対する補足説明をHPに掲載させていただきました。( http://www.gcoe-econbus.keio.ac.jp/2012/02/1-1.html )
ご指摘いただいたトピック2につきましては、調査結果の数字をお示しするとともに、その結果に対する解釈可能な考え方の1つを付け加えたものです。恐怖心・不安得点は6月調査時点で総じて高く、その中で属性間の違いをみると文系や第1分位の所得階層で相対的に高くなっており、その違いは統計的に有意です。この点は調査結果から得られる数字を統計学的に説明したものであり、客観的事実であり、調査実施主体として公表すべき内容と理解しています。また、調査結果の解釈・含意は、あくまで現時点における1つの可能性を提示したつもりでおります。補足説明では、こうした点を敷衍させていただくとともに、私どもの意図が少しでも伝わるよう記述させていただきました。
調査結果の解釈はさまざまなものが成り立ち、それらを仮説化し、検証していくことも私ども研究者の使命と感じております。このたびは貴重なご助言・ご意見を頂戴し、誠にありがとうございました。
慶應義塾大学
パネルデータ設計・解析センター
山本 勲
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