2012年05月02日

EU比較で食品基準安全は誤り −汚染食品から身を守るために−

EUと日本の違い

EUは原発事故以前はセシウム1250ベクレルであり、事故後に日本からの汚染食品が実際に来ることを警戒し、国民の健康第一で基準を厳しくして500ベクレルにした。EUと比較して、日本の食品の旧基準(暫定基準)でも安全と思われがちだ。今まで政府はこの情報を積極的に利用してきたし、マスコミも垂れ流し続けてきた。しかしこれは間違っている。

EU基準は食品の1割がその汚染レベルと想定しての輸入基準である。すなわち希釈係数10%としての基準である。汚染した食品1割に対して汚染されていない食品9割なら食品からの放射能の平均摂取量は10分の1になる。EUはその上で放射線被曝が年間で1ミリシーベルトを超えないように設定している。このことは下記JETRO資料に明記されている。そして実は日本の基準も一定の希釈を前提としている。しかし政府がその周知を怠っているので、多くの国民は食品の放射能基準が希釈を前提としていることさえ知らない。

赤のアンダーラインは筆者が追加。
(国又は地方公共団体が周知目的で作成した著作物の転載:32条)

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もし汚染食品だけを摂取するなら、大人の安全基準は50ベクレル/kgである。子供も場合はさらに低い必要がある。大人50ベクレル/kgの根拠については下記のブログ『子供に安全な食品とは』に示してある。
・安全な食品→ 【子供に安全な食品とは】

簡単に言うと汚染食品を10分の1しか食べないのだから10倍汚染していてもいいという意味だ。だから日本の旧基準500ベクレルがEUとほぼ同様の基準だから安心だと言うなら、日本も汚染食品10%に対して汚染していない食品90%を食べる必要がある事を周知する必要がある。4月からの新基準で100ベクレルになったが、それでも50%の汚染されていない食品を食べることを前提としている。そのことを国民に周知すべきである。

ところがそのことを政府は国民に周知しないため、多くの人は食品の放射能基準が一定の希釈を前提としていることを知らずに、政府の基準以下ならそればかり食べていても安全だと思っている。実際に国内で原発事故が起きてしまって放射能に汚染された食品の流通が日常化している状態で、暫定基準500ベクレルの時に政府の言うことを真に受けて積極的に食べて応援をしていたら、汚染食品1割に対して汚染していない食品9割なんて保証はどこにもない。もし積極的に汚染食品を食べていたら、10分の1に希釈しないどころか、放射能測定をまともにやっていない食品や基準超え食品も流通しているので、場合によっては濃縮だってある。


新基準の再見直しも必要

日本のように食品が広範囲に汚染している状況で、しかも日本では多くの国民が希釈を理解していないのに、希釈を想定とする食品基準は適切ではない。食べ続けても安全な数値に新基準を見直すことが必要だ。

私は昨年から大人50ベクレル、子供はその5分の1以下だとずっと言ってる。2011年11月の環境省地球環境戦略機関(IGES)の専門家会議でも、基準を下げろと農水省役人にも直接言った。それでも500ベクレルが1年続き、すなおな国民は絆と食べて応援で騙された。そして勉強しないバカ学者はEUより安全と今も言い続けている。

実際の被爆量は汚染食品と非汚染食品の摂取比率に密接に関係している。だから旧基準500ベクレルで汚染食品ばかり食べていたら安全でない。大人の場合は非汚染食品を90%食べて10分の1に薄めて50ベクレルにする必要がある。子供の場合は約5倍感受性高いので、50分の1に薄めて10ベクレルにする必要がある。すなわち子供は98%の非汚染食品を食べる必要がある。
・旧基準の危険性→ 【食品基準の即時変更を求める】

新基準は一般(乳児以外の子供を含む)100ベクレルなので、大人50ベクレルのためには非汚染食品を50%食べる必要がある。感受性の高い子供に対して5分の1の10ベクレルなので90%の非汚染食品が必要である。それなのに国民の命を軽視する日本政府は、乳児の新基準を許し難い50ベクレルとし、経過措置で4月以降も旧基準食品を流通させている。
・新基準の詳細→ 【食品放射能の新基準で安全は守れるのか】

食品基準は国民一人一人がかなりの量の汚染されていない食品を食べることを前提としているのに、政府は国民にその周知を怠っている。それどころか、政府の基準は安全だ、流通している食品は安全だと国民に信じ込ませ、『食べて応援』キャンペーンをして汚染食品の摂取率を高めた。しかも民間の独自基準さえ妨害する。マスコミは知っていながら国民に伝えようともしない。国民が知らないのをいいことに政府は意図的に国民を危険にさらしている。政府とマスコミがしていることは国民への許し難い背信行為であり、世界の歴史にさえ永遠に残る犯罪行為である。

今でも多くの人たちは食品基準の希釈という言葉も知らず、政府の基準以下ならそればかり食べていても安全だと思っている。政府が安全だと言った基準だから安心だと素直に信じて、積極的に東日本の食品を食べてばかりいる人もいる。地域差もあるし個人の意識の差もあるので、国民が旧基準で10%、新基準で50%しか汚染食品を食べない保証などない。子供ならもっと事態は深刻だ。しかも食品基準は非汚染食品を一定比率食べることが前提なので、民間が実施している国より厳しい独自基準は必須なのに、事もあろうに政府は食品業界に独自基準をやめろと行政指導した。

政府は今すぐ食品基準を再度見直し、【子供に安全な食品とは】に根拠を示してあるように、大人50ベクレル、子供10ベクレル、幼児5ベクレル、乳児0ベクレルに改めるべきだ。さらに年内続ける予定の旧基準の経過措置をやめるべきである。ただちに食べて応援キャンペーンを中止して、国民に対して今ままで騙し続けてきたことを率直に謝罪すべきである。さらに政府の食品基準で想定していた希釈、すなわち汚染食品の摂取率についての真実を、広く国民に分かりやすく周知する義務がある。

汚染食品から身を守るために

1)2012年3月末までの旧基準(暫定基準)では汚染食品を食べる量は、大人は10%以下、子供は2%以下にすることが必要です。すなわち大人は90%以上、子供は98%以上の汚染されていない食品を食べる必要があります。

2)2012年4月から実施の新基準でも、汚染食品を食べる量は大人は50%以下、子供は10%以下にすることが必要です。すなわち、大人は50%以上、子供は90%以上の汚染されていない食品を食べる必要があります。しかも新基準後も経過措置の名目で旧基準が継続する食品があるので注意が必要です。

3)政府は国民の健康より東電を助けることを優先させて、食べて応援キャンペーンを続けています。そして汚染食品の摂取率について、政府は責任逃れのためにこっそり情報公開だけして、国民への周知は怠り続けています。マスコミはこの事実を報道しません。

4)食品基準は非汚染食品を一定比率食べることを前提としているので、なおさら民間の独自基準は必須なのです。それなのに政府は、食品業界が国より厳しい独自基準で自主検査することやめろと行政指導しています。国民が知らないことをいいことに、政府は国の基準を超えてまで国民を危険にさらそうとしています。

5)上記での『汚染食品』とは、政府の基準値を超えた食品のことではなく、政府基準に従った食品のことです。もし政府基準値を超えた食品を摂取した場合には上記の比率でも安全ではなくなります。

(この記事でのベクレルの記述はベクレル/kgの意味です)

ぜひ関連ブログもご覧ください。
・旧基準の危険性 【食品基準の即時変更を求める】
・新基準の詳細  【食品放射能の新基準で安全は守れるのか】
・安全な食品   【子供に安全な食品とは】

JETRO(日本貿易振興機構)
日本からの輸入食品の放射線検査の許容水準上限を引き下げ(EU)(オリジナル)
日本からの輸入食品の放射線検査の許容水準上限を引き下げ(EU)(キャッシュ)
削除されることもあるのでキャッシュにも残す。
赤のアンダーラインは筆者が追加。
(国又は地方公共団体が周知目的で作成した著作物の転載:32条)

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posted by 中山幹夫 | 食品の放射能汚染